『レッド・プラトーン 14時間の死闘』レビュー

クリントン・ロメシャ著『レッド・プラトーン 14時間の死闘』早川書房 のレビューです。リアルな戦記物が好きな人、リーダーシップ論に興味のある人におススメの本です。

作者はどのような人か

作者クリントン・ロメシャは、アメリカ陸軍 第4歩兵師団 第4旅団戦闘団 第61騎兵連隊 第3偵察大隊 B中隊 第1小隊”レッド小隊” Aセクションに所属する二等軍曹でした。

戦闘前哨(COP)キーティングでのタリバンとの戦いによって、米軍兵士にとって最高の賞である名誉勲章を受章しました。

現在は、この本のような著作物や講演活動をしています。

あらすじ

アフガニスタンにおける、タリバンとの戦闘に著者は従軍します。ところが彼ら小隊が派遣された戦闘前哨(COP)キーティングは、前哨を置く場所としては問題点の多い場所でした。何といっても、周囲が山や丘に囲まれていて、敵からは前哨内が丸見え、しかも高い位置から隠れて射撃が可能ということで、米軍にとっては非常に不利な立地なのです。

タリバンは、この小さな前哨にいる米兵たちを観察し、行動パターンや攻撃への対応の仕方を学んでいきます。そして、体制を整えて米軍への攻撃を開始したのでした。

不意を突かれた米軍では、不運なことに、現場の最高指揮官であるポーティス大尉がたまたま不在でした。急遽、現場の最高指揮官となったバンダーマン中尉は立派にその役目を務めます。

しかしタリバンの攻撃はすさまじく、米軍は不利な状況に…。このままでは全滅の可能性もあるかと思われましたが…。

あとはネタバレになるので、やめておきます。

見どころ

作者のロメシャ軍曹の活躍はもちろん見どころですが、私の勧めるポイントは、代理の最高指揮官になったバンダーマン中尉のリーダーシップです。本来は最前線で小隊の指揮をとるべき人間なのですが、急遽、中隊を指揮することになり、立派に役割を果たします。

会社員のような組織に所属する人間にとって、自分の役職よりも常に上の立場の役についたつもりになって指向することは大切なことです。また、私も会社では中間管理職なのですが、部下がいつでも私の立場で動けるようであって欲しいと思うわけです。

さらに、筆者のロメシャ軍曹が、戦闘の最中にはバンダーマン中尉の指揮に不満を持ちながらも、執筆の段階では中間管理職のような中尉の立場に理解を示していることです。これは企業における組織論にもつながります。バンダーマン中尉は、COPキーティングだけのことではなく、もっと上層部の命令も受けながら、バランスを取りながら現場で指揮を執っているのですね。よーーーく分かります。

また、現代の戦闘、とくにアメリカ軍におけるハイテク機器の進化が凄すぎるます。第二次大戦やベトナム戦争の映画や小説ばかり目にしてきた私からすると、SF小説を読んでいるかのような隔世感がありました。

これから読むあなたへ

私は電子書籍で読んだので、現場の地図や組織図を見ながら読書をすることができませんでした。紙の本なら、何度も地図と組織図を見返すことになるでしょう。電子書籍で読む場合には、何らかの方法で、手元に地図と組織図を置いた状態で読むと、より理解が深まるでしょう。

とにかく、戦争モノ・ノンフィクションとしてはかなりのヒット作であるのは間違いないです。一気に読めます。